2002年7月6日(土)三鷹市芸術文化センター・風のホール

午後1時より、公募で当たった(?)21名による、Chopinのリレー演奏会が開かれており、そのアンカーとしてゲキチ先生が登場。「英雄ポロネーズ」を弾かれた。実にラフに、試弾するかのような演奏で、本番を聴かれた方は、その差に驚かれただろう。その後、簡単なQ&Aが続いたが、ゲキチ先生はお話好きなのだな、と延々トークは続いた。終了したのは、かれこれ5時。ちなみに普段着のままだった。


1曲目のバラード#2では、実に静かに遠くから漂う音色に誘われて、いつしかゲキチ・ワールドに浸っていた。今日の全ての演目に共通して言えるのは、なんとも男性的なChopin像を描いている点であろう。次のバラード#3のコーダ以降、なんと決裂としたChopinなのだ!清々しくなる。かと思えば、「エオリアン・ハープ」の素敵さ、心憎いまでの柔らかさ。ゲキチ先生の音楽には、「1/fゆらぎ」が随所に散りばめられており、自然な心地良さを体感するのだ。練習曲は、体系的にまとまりを持ち、総括的に見ても秀逸な組み合わせであった。特にOp 25-7のレント、身震いがした。ダイナミックな「大海」「木枯し」で、前半戦終了。
後半「幻想ポロネーズ」。多彩な音色で、大曲を自在に操る。時には深い海の底へ、或は天空の彼方へ・・・我々はファンタジーの世界に誘われる。かと思えば現実の世界に引き戻されるのである。しかし、それは明るい未来。生きる希望の光。ノクターン#1はセクシーな魅力たっぷりに、そして、#13には、いつしか涙が溢れてきました。続けて「英雄ポロネーズ」。なんと猛々しく、自信に満ち満ちているのであろう!さあ、元気をだして!!そんなメッセージが込められているかのようであった。
アンコールはスケルツォ#1。まだ本編ではないか?実に贅沢なプログラムである。そして、今日はChopinオンリーのハズであるが、シューベルト=リスト編「セレナーデ」。ホッと一息出来る逸品だった。


終演後のサイン会は、今年最大の列だったのではないだろうか。
だれしもが感動できる演奏家はそうそういない。今回、改めてゲキチ先生の演奏を聴きながら、北大路魯山人の言葉を思い出した。「力強さだけが、人に感動を与えることができる。弱きものからは、なにも伝わらない」
そして、強さだけではない。海よりも広い心。そこには、御自身が体験なさった御苦労が、良い方面に反映されているのだと思います。96年のチラシの言葉は、正にそれを意味します。物理的な1年間に100才分の経験を体験してしまったゲキチ先生だから生み出す事が出来る深さ。それに触れる事ができる幸せをかみしめて、「感動をありがとう!!」

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